日本女装昔話【番外編・第2回】名門私立女子大の怪しい受験生の正体は? [日本女装昔話]
名門私立女子大の怪しい受験生の正体は?(1975年)
毎年、大学入試シーズンになると不正受験のニュースが話題になります。
不正受験には様々なテクニックがありますが、これほど大胆華麗?、ユーモラスな手口で人々の関心を集めた事件はないでしょう。
舞台は今から25年前、東京多磨地区にある私立の名門T女子大です。
事件の舞台になったT女子大学
国際関係学科の試験終了後、一人の受験生が試験官に「私のお隣の人、男の人ではないでしょうか」と告げてきたのが事の発端でした。
なにしろ女子大です。
驚いた試験官は受験票の束から問題の受験生の写真を取り出して密告者に確認を求めました。
しかし、受験票の人物と試験を受けた人物は確かに同一人物でした。
「これが男だって?そんなバカな」「ちょっと老けてるけどね。やっぱり女性でしょう」。
入学試験委員室の教授たちは、この時点では正体を見破れなかったのです。
これで終わっていたら、不正受験は完全犯罪だったかもしれません。
ところが、翌日の英文学科の試験にも問題の「彼女」が現れたのです。
白いタートルネックのセーターに真っ赤なパンタロン、165cmの長身に洒落た7分丈コートをはおり、口紅も鮮やかな水商売風の濃化粧。
地味な服装の受験生の中ではひときわ人目を引く容姿です。
前日は見逃してしまった教授たちのマークは厳しいものがありました。
「手がごつごつしていて女性の手でない」「化粧の下に青い髭剃り跡が見える」、疑惑を裏付ける報告が次々に入試本部にもたらされます。
「間違いなく男だ。替え玉受験だ!」と断定派の老教授。
「いや、ホルモン異常の女性かもしれない。決めつけて間違ったら人権問題になる」と慎重派の若手教授。
入試本部は喧々諤々の大騒ぎになりました。
その時、ある教授が疑惑人物と同じ高校出身の受験生がいたことを思い出しました。
入試が終わった後、同級生たちに受験票の写真が提示されました。
「あなた方の同級生の〇山〇子さんですか」。
2人の同級生は激しく頭を振って「違います!」と断言しました。
これで決まりました。
教授たちは別室に待機させていた疑惑人物を問い詰めました。
観念した「彼女」は、あっさり白状しました。
「彼女」の正体は、なんと本物の〇山〇子の実の父親だったのです。
しかも50歳近い彼は娘の高校の英語教師でした。
後日、娘も父親の無謀な賭けの「共犯」であることがわかりました。
前代未聞の父親女装替え玉受験という悲喜劇はこうして幕を下ろしました。
世間はこの事件に驚き、笑いながらも、女装してまで娘の合格を図った悲しい父性愛にいくばくかの同情を寄せました。
しかし、この事件には不思議な点があります。
まず彼のあまりに見事な女装ぶり。
喉仏を隠すタートルネック、ごつごつした脚線を隠すパンタロン、娘の協力があったにしろ女装ファッションとしての要点を見事に押さえているのです。
そして女装時の堂々とした態度。
彼は受験の2日間、女子トイレを利用するなど女子大という女の園で臆する事なく行動しています。
これは熟練した女装者でも容易なことではありません。
こんなハイレベルな女装行為が、替え玉受験のために思いついた即席の女装者に、はたして可能でしょうか?
もしかして彼は、トップレベルのアマチュア女装者だったのでは・・・?。
真相は25年の時の流れのかなたです。
参考資料 :『週刊サンケイ』1975年4月17日号
『週刊朝日』1975年4月18日号
(初出:『ニューハーフ倶楽部』第31号、2001年1月)
毎年、大学入試シーズンになると不正受験のニュースが話題になります。
不正受験には様々なテクニックがありますが、これほど大胆華麗?、ユーモラスな手口で人々の関心を集めた事件はないでしょう。
舞台は今から25年前、東京多磨地区にある私立の名門T女子大です。
事件の舞台になったT女子大学
国際関係学科の試験終了後、一人の受験生が試験官に「私のお隣の人、男の人ではないでしょうか」と告げてきたのが事の発端でした。
なにしろ女子大です。
驚いた試験官は受験票の束から問題の受験生の写真を取り出して密告者に確認を求めました。
しかし、受験票の人物と試験を受けた人物は確かに同一人物でした。
「これが男だって?そんなバカな」「ちょっと老けてるけどね。やっぱり女性でしょう」。
入学試験委員室の教授たちは、この時点では正体を見破れなかったのです。
これで終わっていたら、不正受験は完全犯罪だったかもしれません。
ところが、翌日の英文学科の試験にも問題の「彼女」が現れたのです。
白いタートルネックのセーターに真っ赤なパンタロン、165cmの長身に洒落た7分丈コートをはおり、口紅も鮮やかな水商売風の濃化粧。
地味な服装の受験生の中ではひときわ人目を引く容姿です。
前日は見逃してしまった教授たちのマークは厳しいものがありました。
「手がごつごつしていて女性の手でない」「化粧の下に青い髭剃り跡が見える」、疑惑を裏付ける報告が次々に入試本部にもたらされます。
「間違いなく男だ。替え玉受験だ!」と断定派の老教授。
「いや、ホルモン異常の女性かもしれない。決めつけて間違ったら人権問題になる」と慎重派の若手教授。
入試本部は喧々諤々の大騒ぎになりました。
その時、ある教授が疑惑人物と同じ高校出身の受験生がいたことを思い出しました。
入試が終わった後、同級生たちに受験票の写真が提示されました。
「あなた方の同級生の〇山〇子さんですか」。
2人の同級生は激しく頭を振って「違います!」と断言しました。
これで決まりました。
教授たちは別室に待機させていた疑惑人物を問い詰めました。
観念した「彼女」は、あっさり白状しました。
「彼女」の正体は、なんと本物の〇山〇子の実の父親だったのです。
しかも50歳近い彼は娘の高校の英語教師でした。
後日、娘も父親の無謀な賭けの「共犯」であることがわかりました。
前代未聞の父親女装替え玉受験という悲喜劇はこうして幕を下ろしました。
世間はこの事件に驚き、笑いながらも、女装してまで娘の合格を図った悲しい父性愛にいくばくかの同情を寄せました。
しかし、この事件には不思議な点があります。
まず彼のあまりに見事な女装ぶり。
喉仏を隠すタートルネック、ごつごつした脚線を隠すパンタロン、娘の協力があったにしろ女装ファッションとしての要点を見事に押さえているのです。
そして女装時の堂々とした態度。
彼は受験の2日間、女子トイレを利用するなど女子大という女の園で臆する事なく行動しています。
これは熟練した女装者でも容易なことではありません。
こんなハイレベルな女装行為が、替え玉受験のために思いついた即席の女装者に、はたして可能でしょうか?
もしかして彼は、トップレベルのアマチュア女装者だったのでは・・・?。
真相は25年の時の流れのかなたです。
参考資料 :『週刊サンケイ』1975年4月17日号
『週刊朝日』1975年4月18日号
(初出:『ニューハーフ倶楽部』第31号、2001年1月)
2020-07-25 21:09
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