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2011年06月08日 石山寺縁起絵巻を読む(見物の人々) [石山寺縁起絵巻]

2011年06月08日 石山寺縁起絵巻を読む(見物の人々)

6月8日(水) 曇り  東京 22.7度  湿度68%(15時)

8時、起床。
朝食は、アップルデニッシュとコーヒー。
シャワーを浴びて、髪にあんこを入れて頭頂部で結んでシュシュを巻く。

化粧と身支度。
黒地に茶・白・薄黄色の花柄のロングチュニック(5分袖)を、黒のレギンス(3分)と合わせてミニ・ワンピース風に、黒網のストッキング、黒のサンダル、黒のトートバッグ。

9時半過ぎ、家を出る。
途中、コンビニで講義資料のコピー。

10時半、自由が丘で講義。
『石山寺縁起絵巻』(近江・石山寺の由来と歴史を描いた鎌倉時代末期の絵巻物)の解読。
巻3の第1段、正暦3年(992)2月29日の東三条院(藤原詮子、兼家の娘、道長の姉、一条天皇の母)の石山詣の場面の絵解き。

この段、13紙に及ぶ超ロング(横長)画面で、女院の行列の全容を描く。
石山3-1-4.JPG
↑ 8人もの車副を伴った女院の御車
檳榔毛(びろうげ)の屋形で、物見戸の部分が出窓になっている最高級の牛車。
後ろには雨衣を担いだ舎人が従う。

行列が通っているのは石山寺の山門に向かう瀬田川の西岸の道で、右(画面下側)に瀬田川、左手(画面上側)は山という自然が豊かな参詣路のはずなのに、画面には遠景の山も植物もまったく描かれない。

その代わり、東三条院の石山詣を見物する人々がたくさん描かれている。
今回は、脇役のはずの見物の人々に焦点を当てて分析。

まず、見物の人々を、集団ごとに分け、手前(行列の後尾)から番号をふる。
画面上側に1・2・3・5・6・8群、画面下側に4・7・9群。
石山3-1-22.JPG
↑ 第1群。いちばん多彩な人がいるグループ。
左端に杖を持ち裾短な僧衣の修行僧?、その隣は頭巾を載せているのは修験者か? 
その右の薄緑色の被衣(かつぎ)姿の人物は女性だろう。修験者の連れだろうか?
薄緑色の被衣は、修行僧と修験者の間の後方に見えている女性の衣と同じ色柄(共布)のように見える。
集団の前に出ている桜襲の袿?を細帯で縛り「藺げげ」(若い女性の履物)を履いた人物は、背後の薄墨の衣に黒い袈裟の老僧が鍾愛している女装の稚児だろう。その右にもう一人僧侶。
右端の5人は、父と息子(座っている)、母と娘2人の一家だろうか。
石山3-1-21.JPG
↑ 第2群。右側、老僧を挟んで向き合うのは童(少年)と女性?
緑の扇を口元にかざした立烏帽子姿の男性の前の二人の子供、左側(薄藍)は男の子のように思えるが、右側(濃藍)の子の性別は微妙。
中央の市女笠の女性の座り方に注目。
胡坐(あぐら)は江戸時代初期以前は女性もしばしば行っていた。
石山3-1-23.JPG
↑ 第3群。行列の近くに寄りすぎたのか、笞を振りかざす役人に追われる見物人。
坊主頭の子供が見える。
長い髪をなびかせて左手に逃げる橙色の花柄の水干姿の童(少年)。
それを追ううなじ髪の子の性別は?
石山3-1-24.JPG
↑ 第4群。画面下側。
禿頭の老人に従う束髪の童(少年)。
その後ろの子供2人は、女院(上皇待遇)の行列を見送るにはあまりに行儀が悪いように思えるが・・・。
石山3-1-25.JPG
↑ 第5群の右。
女性は市目笠を被っているか、着物を頭から被る被衣(かづき、かつぎ)姿。
画面中央は、父と娘?
石山3-1-26.JPG
↑ 第5群の左。
立烏帽子姿の男性が父親で一家で見物だろうか。
ちなみに扇を顔の前にかざすのは、貴人(ここでは女院)を見る時の作法のようだ(直視しない)。
右前の娘の袿?は、第1群の女装の稚児と同じ色の桜襲。
石山3-1-27.JPG
↑ 第6群は横に長く延びる。まず右端。
何か揉め事か。
右側の束髪の男が中腰になって左手を伸ばして挑みかかる。
白衣の僧が片膝立てになり左手を腰刀にかける。
臙脂に黒の菱格子の男が両手を広げて間に入る。
何事かと駆け寄る僧侶、早くも逃げ出す子供。
女院の行列そっちのけの騒動。
石山3-1-28.JPG
↑ 第6群の中央右。
騒ぎの方向に目を向ける一家。
従者が主人に報告している。
母親と思われる女性も市目笠を上げて注目。
この女性の座り方も胡坐。
石山3-1-29.JPG
↑ 第6群の中央左。
このグループでは、右端の童(少年)を除いて騒動に気を取られている人はいない。
皆、女院の行列を注目している。
左端の坊主頭の男の子は上半身半裸。
扇を頭上にかざした僧に伴われた白衣の小さな男の子、将来は美しい稚児になるのかも。
右側前列の白い衣を被いでいる人物の性別は?
被衣は女性の習俗だが、太刀を帯びているので男性?
石山3-1-30.JPG
↑ 第6群の左端。
右側前列で語り合う3人の子供は男の子か?
その内、左側の子は上半身半裸。
その左側、母親と乳母?の間に行儀よく坐っているのは女の子か?
とすると、男の子と女の子の髪型にはほとんど差はないことになり、ますます性別が判りにくくなる。
石山3-1-31.JPG
↑ 第7群。画面下側。
目の前を行き過ぎる女院の御車を合掌して見送る老尼。
しかし、その孫たちは?お行儀が良くない。
左端の子供は腹這いで頬杖。
行儀の悪い子供は第4群にも見られた。
この時代、子供は世間の礼儀の外にあったようだ。
成長の過程で礼儀を身に付け大人になっていく。
石山3-1-32.JPG
↑ 第8群。東面する石山寺の山門の北側。
石山寺の山門の前では、橙色の華麗な袿?に「藺げげ」(若い女性の履物)を履いた女装の稚児が近づいてくる女院の御車を左手をかざして見ている。
後で長い数珠を持っているのは(顔が見えないが)、見物の場所からして石山寺に縁の深い身分のある僧侶だろう。
稚児の美麗な装いから師僧の寵愛の深さがうかがえる。
女装の稚児とその左側の男の子ちとは、それほどの年齢差はなさそうだが、ジェンダーの差は歴然としている。
石山3-1-37.JPG
↑ 第9群。画面下側。当面する石山寺の山門の南側。
少し腰が曲がった老僧が水色の地に可憐な模様の水干姿の稚児の肩に手を置いている。
稚児はかなたを指さしながら「お師匠様、あれが女院様の御車?」とでも尋ねているのだろうか。
稚児の背に垂れた艶やかな黒髪が印象的。
長く美しい黒髪は稚児の「命」だったと思われる。
画面左端の朱色の水干の稚児は「藺げげ」(若い女性の履物)を履いている。

12時、講義終了。



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